ファンにとっては、最大の魅力はDVDだろう。たしかに何らかの形で目にしたことのあるものもあるだろうが、それらを1枚のDVDでまとめて、しかもきれいな映像で大きな画面で見られるのはやはりありがたい。それから、CD収録曲としては、70年代のベスト盤に追加の新曲として収録されそれが廃盤となってからは長年入手が困難だった“Stranded in a Limousine”や、これまで日陰の存在だった“Peace Like a River”などが入っているのが興味深い。前者は、最近リマスタリングして再発されたアルバム_One-Trick Pony_(紙ジャケ日本盤あり)のボーナス・トラックになっているが、長年日の目を見なかったのにベスト盤に選曲されるとは驚きだ。後者は、2006年のモントリオール・ジャズ・フェスティヴァルでサイモンを讃えるトリビュート・コンサートが行われた際にエルヴィス・コステロとアラン・トゥーサンが印象的な演奏をしたこともあって選ばれたのだろう。(そのコンサートは現在輸入盤_Tribute to Paul Simon_として入手可能。)オリジナル・アルバムは全部持っているというファンでも、買っても良いのではないだろうか(サイモンがガーシュウィン賞を受賞したことへのお祝いの気持ちも込めて)。
私は彼のアルバムは過去のもの、リマスターのもの全て買い揃えていますが、この作品はとても楽しみにしています。そして、より多くのリスナーの手に届くように願っています。 踏み絵のようなベスト盤 S&G解散後のポール・サイモンの音楽はエスニック・サウンドに接近しながらもAOR的な部分を残した"Hearts And Bones"までの時期と大胆に転身した"Graceland"以降に大きく分けられます。この作品は概ねその二つの時期に分けた2枚組のベスト盤で、また現時点までのアルバムすべてから偏りなく選曲されており、そういう意味ではこれまでの活動を俯瞰しやすくまとめた好編集盤と言えるでしょう。 ただ、これまでオリジナル・アルバムをきちんと聴いてきた者としては、新たにリマスターされたとはいえ、音源的には興味がもてない「どうでもいいベスト盤」です。初回盤のみレアな映像が入ったDVD付きですが、「全てが初商品化」と謳っているのは誤りで「サタデー・ナイト・ライブ」の映像なんかはこれまでも正規に観ることができましたし、ほかもネット上で見ることのできるものも多いです。 要するにファンにとっては「DVDの為に5000円出せるのか?」「輸入盤なら60%の価格なのに字幕のためだけでここまで出すのか?」ということが問われる踏み絵のようなベスト盤、です。 どうせなら、早く"Hearts And Bones"のガーファンクル参加ヴァージョンを正規発売してくれよ、と思うのは僕だけでしょうか??